白い闇(もしくは愛憎。)
茫漠と覚醒と激情の日々だった。 頭の中に白いミルクのような濃い霧が立ちこめ 視界をさえぎり僕を苛つかせた。 彼が存在し僕の一歩前を歩むだけでのろわしい。 この鬱屈とした空間から脱出したい 手段のわからない僕は目の前の白いパジャマを引き裂いてみた。 出口が見つかるかもしれない。 でも、眼の前に現れたのは裂いた衣服と同じ白い肌だった。 トリックにあった気になった。 しかもこの肌はさらに迷宮をかくし僕を挑発する。 腹をたてた僕はそれを押したおして自分の体を打ち付けた。 それは存外に愉快なことで、僕は夢中になって続ける… 白い肌の持ち主は最初はもがいていたが助けを呼びはせず。 最後には僕の首に手を回し一緒になって体を揺さぶっていた。 僕は澱のように溜まった苛立ちを吐き出すと ずいぶんと気持ちも体も落ち着いて床に転がる少年を見ていた。 押さえ込んだ時のあざがあちこちに出来ている。 僕はかわいそうと思うでもなく 『口止めをしなくちゃな…』 そう考え彼の名を読んだ。 「ニア」 彼は長い銀色の前髪の隙間から僕を見た。 僕は彼の口を唇でふさぎ 呪文で鍵をかける。 「誰にもいうなよ?良かったんだろ?」 まんまと彼を共犯に仕立て上げた。 しばらくはその新しい遊びに没頭した。 体も頭も熱で浮かされているようだ。 最初は自分の愉しみしか考えていなかったが そのうちニアの反応のほうが気になるようになってきた。 僕は激しく動きながらも あの高慢な口から切ない声が漏れたり 白い肢体が痙攣したりする瞬間を楽しんだ。 スローモーションのようにじっくりととらえ 五感の全てで感じ取り世界から切り取りスクラップして 記憶のフォルダに書き込む。 二人の秘密は隠微なもののはずなのに僕はなぜだか 澄み切った気持ちになるのだった。 だが、みせかけの平穏は長くは続かなかった。 僕はそのうち物足りなくなりニアの中に侵入したくなった。 ニアはそれをかたくなに拒んだ。 「そのための器官ではありませんから…」 僕自身、その扉をあけたら後戻り出来ない不安感があったのだが ニアが拒絶するからムキになってしまう。 「じゃあ、他の女の子としろっていうのかよ。」 ニアはうつむき、だまってベッドに腰掛けている。 指はシーツを握りしめていた 「痛いの位我慢できないなんて、お前は僕の事好きなんかじゃ ないんだな、もういいよ。」 わざとらしくニアの前を通りすぎると上着の裾がひっかかる 彼がつかんで引き留めている… 指がかすかに震え、唇をかみしめ、上目遣いの眼は僕にすがって 潤んでいる。 「メロ…」 消え入るような小さな声でつぶやく 僕を引き留めるために体を差し出す愚かなニアがとてもとても可笑しかった。 僕は彼の額に乾いたキスをして白い上着を脱がせる ようやく僕を包む白い闇を切り裂ける、彼の全てを手に入れるのが 彼からの脱出だった。 僕とニアの間は常に逆説に満ちていて 全て螺旋のようにねじれていた、でも今夜でもう終わる… おざなりの愛撫と潤いを与えてから 僕は中央からニアを引き裂いていく 彼は平然とした風を装っていたが激痛をこらえてるのが 僕にはわかる ニアの柔らかい体は少しこわばり体温はわずかに下がった。 僕はニアの事なら、どんな細かい変化も知っている。 なにせ彼しか見てないのだから。 苦しそうなニアをかき分け進む、 僕は高揚とし激しい悦びに震える。 ニアの内部は熱くて窮屈で僕は進むだけで汗を流した 息があがりそうになるが、早く最深部まで突き破りたかった。 ようやくそこに達した頃、 歯を食いしばり耐えていたニアが それまで聞いた事もないような声をあげだした。 息も絶え絶えになりながら なにを言ってるのかわからない呪文を唱える そして体は僕を捕まえて動き出す。 さっきまでの情けない仕草は嘘だったのだろうか? 僕をとらえるための? 僕はニアの甘い罠にはまったのか! だって、今の僕はすっかりニアの蠢きや唇や背中に回した 腕に囚われて翻弄され、 その上この牢獄から逃れたくない、このまま夢を見ていたい そんなふうに思っているののだから。 ニアの毒が体中に回るまでにここから出なければ! 僕が繋ぎ目をはずそうと 激しく体を揺さぶるとニアは益々大きく 魔法の言葉を唱え出す。 それは僕の脳天からつま先まで電流のような快感を走らせる。 僕は必死で抵抗しようともがくが、 さらに彼の魔力を高めるだけだった。 こんなに心はバラバラなのに2人の動きは 美しい旋律のように調和している。 ニアが僕の名前を叫ぶ、魔法の最終章だ。 ついに僕はニアに屈服した。 薄桃色に染まったニアの体の中でこらえきれず全てを吐き出して しまった…。 息を荒げやっとの事で体を離す。 彼の体の中から血のにじんだ液体が流れ出る、 ニアは体を傷つけ汚された。 それでも僕を責めはしない…。 そんな彼に僕は心が傷つき 汚れる。 僕はベッドに横たわったニアにかまわず 膝を抱えて顔をうずめた。 ニアは体を起こし裸の僕に上着をかけ、そしてつぶやく。 「私たちは…どうしたらいいんでしょう、メロ。」 「わかってるくせに聞くな!」 僕らは一緒にいてはいけない。 でも、その時はその言葉は言えなかった。 なぜか。 ニアは膝をつき僕の額にやわらかく接吻した それが解放の呪文なのか 呪縛の刻印なのか 僕にはわからない。 END |
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