真昼の月
感情が素直な彼の心は肌を合わせると たやすく私の中に流れ込んでくる 怒りも。苛立ちも。 でも今夜の彼は弾んでいるようだ 楽しそうに体を進める 「いいことがあったのですか?」 「ああ、明日からな。」 彼のご機嫌がいいと私もうれしくなる、 私を抱く手も繋げる腰も軽やかで優しい 私も彼をなめ上げたり、締め付けたり、彼に応える。 自分で大きな声をあげながらも 彼の甘い吐息や漏らす声は聞き逃さない。 全てを収集して秘密の小箱に鍵をかける 誰にもわたさないように。 終わった後も今夜は壊れ物を扱うようにそっと 抱きしめてくれる… 私の銀色の髪に細い指先とくちびるで愛撫を 繰り返す… それだけで甘い陶酔が天国から降ってくる… 巻き込まれて堕ちないように彼にしがみつく… 「好きですよ メロ」 「俺もだよ ニア…」 私たちは生まれて初めてキスするかのように そっとくちびるをあわせた… 目が覚めると彼はいなかった。 置き手紙すら残っていない 残酷に捨てられたのだ。 カーテンの隙間から差し込む陽光の中 彼の笑い声が聞こえる、私は額を手で覆いうつむいた。 私の存在があなたを追いつめるなら もう私はあなたを追わない でも、それはあなたを傷つけ あなたはまた私を追うだろう… 繰り返すカルマの環を断ち切るすべを私は知っている。 私が彼に傷つけばいい。 痛み、怒り、呪いの言葉を吐き出せば 彼は私から解放される こんなに彼を愛してるのにそれだけは出来ない。 私は私で彼を憎んでいるのか? 彼を蹂躙したいのか? 窓の外の水色の空に白い月が浮かんでいる 夜にはその輝きを讃えられるのに 太陽がまたたくうちは存在すら忘れられる真昼の月を 私はぼんやりと眺めた。 END |
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