「Never Land」
後編 携帯用2
それからの半日はシャワーを浴び、ひと眠りし、小腹がすいたら残りの食べ物やクラッカーを齧り、またセックスをする、の繰り返しだった。 ニアは勝手に俺の歯ブラシを使う、注意すると。 「今さら、何言ってるんですか?もう私もあなたも同じじゃないですか」と軽く笑う。 そうか、もう同じものなのか、俺も可笑しくなって笑った。 今日も快晴で風通しは良いが昨日より蒸し暑いようだ。 ニアはどうせすぐ脱ぐのだからか、パジャマの下を放棄し上着と靴下だけでベッドにうつぶせに寝そべり退屈なTVを観ている。 俺はといえば、溶けかけたチョコを舐めながらニアのぶらつかせている素足の動きを眺める午後だった。 なんたる無生産。 なんたる自堕落。 まるで無職のなれあい同棲カップルだ、こんな緩慢な時間は俺の人生で初めてだ。あえて言うなら、ワイミーズ時代、試験が終わった後の空虚と安堵の時間に似ているかもしれない。 サイドボードのニアの携帯は相変わらず放られている、 ニアは帰る気がないのだろうか?この気だるさのぬるま湯に浸かっていると、俺たちは何年も前からこの部屋で暮らし、そしてこの後もずっとここで溶け合っていくような奇妙な錯覚にとらわれそうだ。 TVでチョコレート人形のCMがかかった、それが気になったのかニアは前のめりになって見ている。 こいつはいい年して、まだ玩具に夢中なのか? 呆れる俺をよそに、ニアはそわそわしだしキッチンに向かう… 戻ってきたニアの口には冷蔵庫で冷やされた板チョコがくわえられていた。 持ち主の俺がぬるいチョコ食べているというのに、この野郎! 「おい、ニアそれ僕のだ ………!」 思わず口を覆った、子供っぽい言葉を使ってしまった!マフィアの俺様ともあろうものが…! そして、憎たらしいニアはこうした失言を決して聞き逃したりしない。 丸い黒目がくるりと一回転する。 「メロ……昔のメロみたい…」 「くっだらねえ!」 阿呆みたいな時間を過ごしてしまったから一瞬幼児退行したんだ。 きっと。 ニアは俺のそむけた顔をじっと見つめ… そしてチョコを置いて語りだした。 「どうやって、あなたの居場所を知ったのか聞きましたよね…この建物は前々から入居者をチェックしていたのです。だって……。 似ているでしょう?ワイミーズハウスに」 怒りで青筋が立っているのが自分でもわかる、はらわたが煮えくりかえりそうだった。 自分自身の間抜けさに!!!! くだらねえ娑婆っ気が未だに消えてなくて、そのせいでライバルにあっさりアジトを突き止められたってのか! 髪の毛をかきむしりヒステリックな雄叫びをあげ、俯くしかなかった。 格好悪すぎる。 足元の床にぶかぶかの白い靴下が近寄るのが見える。 「今、来たらまた犯すぞ」 低い声で脅した、だがそれは音もなくさらに近づく。 ベッドに腰掛けている俺を包むようにニアの手が伸びた。 「いいですよ、しましょう?もう時間がありません」 いつの間にか黄昏が忍び寄っている。 そうか、もう終わりのはじまりか。 やはり永遠などないのだな。ニアと俺の間を空虚と沈黙が支配する…それを壊すためニアの腕をつかみベッドの上に無表情で引き寄せた。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「ああ…ん…ああ…メロ……!………ん!!!!アッツーー」 薄暗闇の中、体中の愛撫に身をよじりながらニアは喘ぎ、乱れ咲く。 シーツをひっつかんだかと思うと俺の体に両足を絡め、腰をすりつける。 2日前まで何も知らないガキだったとは思えない貪欲さとテクニックだ。 そんなニアのペースに巻き込まれずリードを保つため俺も真剣だった。 汗をしたたらせ2晩のうちに攻略した、こいつのウイークポイントを舐めあげながら攻め立てる。 朝から何度も達しているのに、またニアは膨らんで解放の時を待ちわび、しずくをたらした。 「手でするか?口がいいか?」 「あ…待って下さい、メロ…その…」 桃色に上気したニアはほんの一瞬、沈黙し…そして。 「挿れないんですか?」と問う。 少し驚いた。 「いいのか、まだ傷は治ってないだろう。また血がでるぞ」 「遠慮していたのですか?それとも心配でしょうか?いいんです。私は…繋がりたいです、あなたと」 ニアのまっすぐな視線にとまどい、紅潮しているだろう俺の頬を隠すために頭を垂れ毛先で顔を隠した。 「俺の味が忘れられないのかよ、淫乱な奴!」 照れ隠しに汚い言葉をぶつけ、それとは反対に優しくキスをした。 口腔を味わいながらニアの滴りを指に絡め、それを秘所になすりつけ すこしずつ緩め、なじませる。 1本、2本と指を増やしていくうちニアは顔をゆがめた。 「やめとくか?」 「いいです!来てください」 求められる快感に俺のほうも準備万端だ。 一昼夜、挿入のおあずけを食っていた俺の怪獣は制御不可能な程やる気満々だった。 そろそろいいだろうか?ゆっくり指を抜き挿入しやすいよう体勢を変え 足を肩にかけてニアの腰を浮かせる。 そして片手にペニスを持ち照準を定めあてがう… 桃色に閉じられた、そこはすでに待ちわびてひくついているように見えた。 最初の日の暴行ではなく俺たちはこれから本当のセックスをするのだ… 高揚感に手が震えそうになる、だが、丁寧にニアの中に進んでいく。 ズズ… 二人の体が奏でる音にニアはああ!と嘆息をついた。そして俺を奥深くに導くよう力を抜き、全てをゆだねた。 根元までゆっくりと埋め込む、かってない達成感と恍惚が体の中心から隅ずみまで行きわたりそれだけで果てそうになった。 ニアの性器も同様に息もたえだえな呼吸とは裏腹に反り返って勃ちあがっている。 「あ…もうだめです…」 苦しそうにニアはつぶやく。 「何、言ってるんだ、これからだぞ」 俺はいきかけたニアを止めるために先をしばるように握りしめ、内部からの刺激を与えるため腰の律動を始める。 パイプベッドの軋みが少しずつ大きくなる。それに呼応し二人の興奮も高まる。 「あ、あああああ…はあ…」ニアの中で痛みとは違う何かが生まれつつあるのが全身の変化からわかる。 桃色はさらに紅く艶めき軽い痙攣が止まらない。 「いや…いやです…メロ」ニアが悲鳴をあげた。 「何言ってんだ、すげえ熱くて俺を咥えて離さねーぞ、お前の中。 いいんだろ?感じてるんだろ??!」 「嫌…変です、飲み込まれる…!!」 ニアは頭を振り乱し、見せた事のない動揺を露にした。 「怖いのか?自分でコントロールできない感覚なんて初めてなんだな?いいから全部手放しちまえ! ただ感じてみろ!」 「や、やあ…」 まるで赤ん坊のみたいだ…ニアのなかには、こんなニアもいるのか 俺が与える、あまりの快感に不安を覚え混乱をきたしている。 なんだかいとおしい気持ちになった。 「怖くない…俺にまかせろ。」 驚くほど優しい声を出してしまった。 それを耳にしたニアから体の緊張がほどけた、官能に抵抗することをやめ理性を捨て、自分の中の性と生命の密を味わう。 そこにたたみ掛けるように小刻みに腰を打つ。 浅く、深く…強く…さらに強く!! 「…メロ、メロ……一緒に…」 「ああ、二人一緒だ」 最後の楔を打ち込み突き上げ、俺は自分の限界と共に握りしめたニアも解放した、快楽の津波が怒涛のように押し寄せ、堰を切りあふれだす。 「は ああああーーーー!」 二人は声を挙げ、抗うことをせず、このうねりが果てるまで共に流されるのだった。 抜いた後もニアは俺を離そうとしない。首に腕を巻きつけ「メロ…メロ」と俺の名をつぶやく。 「ニア…ニア…」 思わず俺も返してしまう。 すがりつくニアを俺も抱きしめ額にキスをした。 かわいい…そんな科白をはきそうになり慌てて飲み込んだ。 疲れと人肌の暖かさで、また眠くなった……さっきの言葉を寝言でつぶやいてしまったら困るなと思いつつ、目の前の揺れる銀の髪からもれる寝息に合わせ俺もまどろみの中に堕ちていくのだった。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 携帯電話を切る音で目が覚めた。 サイドテーブルの明かりをつけるとベッドの脇に白い影が見えるパジャマに身を包んだニアだ。 ゆっくりと振り返り俺を見る。 「帰るのか?」 「はい、0時きっかりに門の前に迎えが来ます」 肘をつき手のひらで頭を支えニアを見つめる… 「お前は、なぜここに来たんだ?」 俺をSPKに勧誘し配下に置くつもりなのかと思っていたが、そうではないのか? ニアはだまって間口に進み、また振り返った。 「さっき…自分でコントロールできない感覚は初めてだろうとおっしゃいましたが違いますよ。 今回ここを訪れたのは…そうした感情に突き動かされたからです。危険や損得抜きに」 「言ってる意味、わかんねえ」 「この秋から大きなうねりを迎えますよ、世界もキラ事件も。あなたも知っているから動いたのでしょう?」 「!…」 「だから、秋が来る前にあなたに会いたかった…今日が終わるまで一緒にいたかったのです。まさかここまで色々な事が起こるとは思いませんでしたけど……」 ニアは口の端をあげ微笑むと玄関に向かい姿を消す。 俺はベッドから飛び降り、足音を響かせニアを追った。 ドアから風と共同廊下の薄明かりが差し込みニアの半分を照らす。 半分の光、半分の闇。 「さよならは言いません、またすぐ会えるでしょう、メロ」 「ニア…何度も言うが俺はもうLもキラも関係な…」 「私はあなたの写真を持っています。」 ドアが閉まった。猛然と駆け寄り、後を追い廊下に飛び出したがニアの姿はすでに消えていた。 いったいどうなってんだ普段は歩くのさえ鈍間なくせに。 階段を降りる小さな音は遠ざかる… 古い建物の煤けた天井の梁はいつものように軋み、滅びの時を待っているようだった。 追いかけるのはやめた、そう、近いうちに俺はニアに再び会うだろう。 その時に俺を挑発した事を後悔させてやる! ドアからの風が寝室の窓に抜け、激しくカーテンを揺さぶる音を夜に響びかせた。 「もう、そろそろ秋だなあ」 窓を閉めながら夜空を仰いだ。 脳裏をピーターパンの幻影がよぎる、「ネバーランド」は「永遠の国」なのか「決して存在しない国」なのかどちらなのだろう? Lを夢見てライバルたちとぶつかり、泣き、笑っていたワイミーズハウスこそがネバーランドなのかもしれない、いや、この奇妙な3日間がそうなのか? 暴力・憎しみ・怠惰・執着…そして多分愛情。 ひしめく感情の全てが溶け合い融合した、儚いひととき。 「くだらない…」 目を閉じつぶやく。 過去の事などどうでもいい、俺が欲しいのは未来だけだ。 未来に「ありえない永遠」を手に入れてやろうじゃないか! 明日にはここを引きはらおう、いや、今すぐだ。明かりをつけ何気なく時計を見る。 そういえば、ニアは今日まで俺と過ごしたかったと言っていたっけ? 今日? デジタルの表示は 2009・8・24 を指している。 建物から離れていくエンジンの音が微かに聞こえると同時に日付は25日に変わった。 この日付けの意味もいつか、解かるのだろうか。 俺はしばらくニアと8月24日の意味に取り付かれていたが、パソコンの配線を引っこぬく作業に没頭しているうちに頭から振り払えた。 感情の切り替えができるのは良い気分だ、俺は鼻歌で賛美歌を歌う。 ただ、体に残ったニアの香りだけは簡単には追い払えず、首筋を惑いの指先になでられるような錯覚に襲われる… そんな晩夏の夜だった。 2009年の夏が暮れる。 END |
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8月24日にUPするべき内容ですよねえ…
9月になってしまい面目ないです。
「Near」の「N」からはじまる物語として「NEVER LAND」
というタイトルの話を書こうと冬くらいから思っていたのですが
皆さんご存じのようにマイケル・ジャクソン氏がお亡くなりになり
このタイトルを使う事をちょっと躊躇してしまいました…
もはや、「ネバーランド」というとピーターパンの国としてより
マイケルの私設遊園地として有名な位ですからね。
なんだか故人に申し訳ないような気分になったのですが、
検索すると他にもネバーランドという名のテーマパークやグループは
色々あるようで、気をまわしすぎる事もないかなと思うのと同時に、
検索のために打ち込んだスペルを眺めていると「NEVER LAND」は
「NATE RIVER」に字面が似ている事を発見!(笑)。
そのままのタイトルにいたしました。
誕生日SSには似つかわしくない苦さの残るお話になってしまい
ましたが、久々に原作の隙間を埋めるチャレンジが出来て楽しかった
です。それと同時に今年2009年は2部イヤーとして深い意味が
あることを実感。
デスノファンにとって楽しいだけでなく寂寥感もつきまとうだろう
この秋から冬ですが、リアルタイムで味わえる事を感謝しつつ
来年の1月28日を迎えたいですね。