「あれだけよがってたんだから、合意だよな?」
恨めしそうに身体を丸めているニアにそんな言葉を放り投げ彼のPCを
開きニアが隠したがっていたものを探す。

だが案の定、厳重にガードされている、一応、パスワードを探そうといじくっていると
「あなたの頭なんかじゃ解けませんよ…。」
床に擦り付けすぎて灰色になった背中から憎憎しげにニアがつぶやく、
「なんだと?」
俺のコンプレックスを刺激し挑発的な言葉をぶつけてくるが
俺はさっき色々吐き出した後なので、これくらいでは逆上しない
キレたのはニアのほうだ。

「あなたが私に勝てるのは腕力だけじゃないですか!それで何度も私を蹂躙して…
…もう嫌です!出て行ってください、出て行かないなら私が出て行きます!」
「勝手にしろ!」

震えながら怒鳴るニアを後にし俺はバスルームに向かった。
バスタブにシャワージェルの泡をふくらませ、全身を横たえる…
熱い湯とシャボンのよい香りにつつまれ身も心も弛緩してくると
さすがに、先ほどの行為が乱暴に覚えてくる…俺はいつもこうやって後悔
するのになぜ感情的になるのが直らないんだろうな…?。
まるで、壊れることが怖くて自分から壊してしまうみたいだ。

ニアの汚れた身体を洗ってやろうかと、バスタブをでて腰だけタオルを
巻き部屋に戻る……
「ニア?」
その姿は消えていた、隠れているのかと思ったが彼のPCやデータケース
お気に入りのブリキのロボットのいくつかとトランク、そして一足しか
持っていない靴が無くなっていた。

バカな…ゆっくりしていたとはいえバスルームにいたのは30分かそこらだ
いつものろのろした動作のニアがこの短時間に荷物をまとめて出て行ける
なんて……いや、やればできる奴だったか…あいつは…

ふと、自分のシャボンの香りにまぎれて気がつかなかったが部屋に微かに
残り香がする……  涼やかな柑橘系…

「ハル!……あいつら…こうなるのをわかって…!」

やられた!あいつらに踊らされていたわけか…
取り返してやる…と頭は思っているものの、足は動かず…俺は半裸のまま
ソファに身をうずめた…
もう…潮時なのかもしれない……いつも衝突の繰り返しだ。
でも、ニアが出て行った事は初めてだった、
俺が連れ戻さなければ帰ってこないだろう…
しかし帰って来てもまた同じことに繰り返しになるのは目に見えている…
結婚でこんどこそ落ち着くかもしれないと思ったのに、8月末のニアの
誕生日からたった3ヶ月半で破局か……。

ん……まてよ…今日は……。

!!

俺はタオルを脱ぎ捨て立ち上がった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



平和で豊かな住宅街は夜はクリスマスイルミネーションがともり、
玄関には趣向をこらしたリースがかかり窓からは
親子や恋人たちの穏やかなシルエットが見える。
仕事帰りの通行人がちらほら俺を見て通り過ぎていく、レザーに身を包み
フードで顔を隠し歩道に仁王立ちにたつ俺はこの街ではやはり異質なのだろう。
それは好都合だ。
明かりの消えている家に向かって、俺は叫ぶ。

「ここにいるんだろうニア!わかってるぞ!出て来い、こなければ
いちかばちかでここを爆破する!」

響き渡る声に家々のカーテンが動き、不安そうに住人がのぞく、
気弱そうな親父が通報しようかと携帯を開け閉めしている。

すると扉から黒い袖がのび…
「近所迷惑ですよ!!」
青二才が手招きをして俺は中に入る事ができた。
暗闇だと思っていた家の中はこうこうと明かりに満ちている、窓に明かりを
漏らさないシールドが張られているらしい、よくできたアジトだ、
ここを爆破されるのは嫌だろう、もっとも爆薬などもってないが。

ジェバンニが居間の壁のスイッチをある法則性で押すと本棚が裂け
地下室への階段が覗いた、なるほどここが本部らしい。

階下に降りていき、モニターだらけの部屋をあける、
案の定、ニアはその部屋の隅にうずくまり、ブリキの帝国を作っていた。
汚れたパジャマは着替え純白をまっとっている
そばにはレスターとハル・リドナーが護衛するように立っている。

ニアは俺がこの部屋に来たのが意外そうだった。
「なぜ、彼を入れたのですか?」
俺はかまわずニアの元に歩み寄る…

「意地張るなよ、迎えに来るの待ってたんだろ?…」

俺はわれながら驚くほど優しい声が出せた、そしてニアに腕をのばす。
ニアは俺の声色に頬が軽く上気した、うれしいに違いないのに、
SPKの前で甘い言葉をかけられたのが恥ずかしいのか、
強情にまた背をむけロボットを抱きしめた。
俺に言われたくはないだろうが、まったく素直じゃない。

「追い返せといったでしょうジェバンニ、早く任務を遂行してください!」
「しかし、ニア…。」
「私が連れてくるよう命じたのだ、このさいだニア、ハッキリ言ってやったら
どうだね?もう戻らないと…」
レスターは喜色満面だ、こんなにうれしそうな顔の人間って初めてみたかも…

「……私はもう…疲れました…メロはいつも私がせっかく積み重ねたものを
壊すのです…それも完成間近に…トランプもサイコロも!!生活も!!!!」

「ごめんな、謝るよ。」
「謝ったって……。」
ストレートな謝罪にニアは困惑している。
確かに俺が人前で非を認めた事なんてなかったからな…

「喧嘩と謝罪いつもそれの繰り返しなんじゃないですか?
進歩の無い関係はむなしいものですよね。」
ジェバンニが口を挟む、うるさいな!

「ニアの考えはわかったわ、後はメロの気持ちだけね。」
ハルが勝ち誇ったように腕組みをしている。

「昼間の返事を聞かせてくれるかしら?メロ。
ニアがここに来たことで彼は私たちを選んだも同然だけど?」

「離れたほうがお互いのためだから別れろって話か?

返事ならNOだ、お前らがニアから自立しろ。
俺たちは刷り込みだのなんだのの出来合いの言葉で括れるような
ありがちな関係じゃないんだ。

こんな馬鹿は世界で俺とニアの2人だけなんだよ!!」

ニアは面食らって俺を見ている、俺だって驚いている、この俺が人前で
世紀の大告白みたいな台詞はいてるんだから…。

「ニア、離れられるなら、俺たちはとっくに離れてるだろう!?
俺たちは2人じゃなきゃだめだろう!帰ろう俺たちの家へ!」

俺が伸ばした腕をニアはもう拒まなかった…床から立ち上がり俺に近づく…
すかさず、俺は2本の腕で抱きしめる!
ニアの手からブリキのロボットが落ち床に転がった。

「離せるなら腕づくで引き離してみろ!」
連中に見せ付けるように正面きって宣言してやった!
ニアは下を向いているが、体温が上がっている…俺にはわかる…
顔を見てなくても、言葉などに出さなくても、今、ニアは幸福なんだ!

SPKの面々は苦虫をかみつぶしたような顔をしている、ざまあみろ!……と…

「仕方ないですね…。」
3人は胸元から銃を取り出し一斉に俺たちに向けた、

「リドナー!ジェバンニ!レスター指揮官、何を血迷って!やめ…。」

ニアの叫びの途中で重なる銃声が轟く!
ニアを抱いていた俺は銃を取り出して応戦することはかなわず、
背中でニアを守るしかなかった………。



「パアアーーーーン!」
?…ずいぶん、軽快な銃声だな…。痛みもない…そらしたのか…・?
床に転がった身体をゆっくりと起こすと……俺の背中と髪の毛は
万国旗と紙テープにまみれている…

「なんだこりゃあ!」
なんのアメリカンジョークだ!この国には何年もいるが
俺はこういうの大っきらいなんだよ!

「素晴らしいナイトぶりだこと、合格ね、メロ。」
「どういう事なんですか?皆さん!」
俺の身体の下のニアも声を上げる、
「ニアすまない、ボスの命令で彼の事をテストさせてもらったのだ。」
「ニアが単独で仕事を引き受けてくれないのなら、メロと2人ペアで仕事を頼みたいとの
話だったのですが、メロは経歴に陰の部分もありますし…私たちも一緒に組むほど
人格を知っているわけでなないですからね。」
「私はいい子と思う…と推したのよ、でも、特にレスター指揮官は不安があったみたい。」
「仕方ないだろう…私は真冬にまでヘソを出してる人間と仕事をした事などないのだから。」

うるせー!ほっとけ!

「それにしても私まで騙すなんて人が悪い方たちですね!」
ニアも起き上がり銀髪に絡んだ紙吹雪をぬぐった。
「すいません、敵をあざむくにはまず味方からと申しますし…。」

「まあ、いいでしょう人にいっぱい喰わされるのも新鮮でした、普段は逆ですからね。」
「おい!良いわけないだろう!こんなになめられた真似は初めてだぞ!
じゃ、じゃあ…あの話も俺を怒らすための嘘なのか…よ!」

「大人の関係の話?嘘じゃないわ、SPKとニアは大人同士のビジネスで結ばれた仲よ、
大統領と長官がニアの『頭脳』に惚れ込んでるのも言葉通りの真実よ?」

この喰えないアマは〜〜〜!美人だけど独身なわけだ!!!!!

俺は担がれた悔しさに顔はひきつっているものの反面
安心で肩の力がぬけ(俺はやっぱりあの話に一番こだわっていたようだ…。)
相反する感情に目を白黒させてしまう。

そんな俺たちに国家とSPKは正式な仕事を依頼してきた、
俺たちの探偵事務所としては初のまともな依頼だ。
内容も俺がやりたかった、ワイミーズの先達のLが手がけていたような仕事だった。

しかし、だまされて、勝手にテストされた俺は素直に受けるのは悔しすぎる…

「怒ってるメロ?許してちょうだい誕生日のサプライズは謀略には入らないものよ。」
ハルがなだめるように人差し指をくちびるにあて俺に目くばせする…

そう…俺も忘れてたのだが今日は12月13日。
俺の誕生日なのだ。

「え!メロの誕生日だったんですか!忘れてました、私!」
「なんだって…!だってお前…。」

俺はニアが出て行った後、今日が自分のバースデーだった事を思い出し、
ニアがPCでこそこそしていたのは俺に秘密のプレゼントを用意していたのに違いないと……

それで……ここまで迎えにきたんだけど……!?

俺がそう語るとニアはとても困った顔をしたが、意を決したように話だした…

「あれは…実はロジャーからの事務所への仕事の依頼だったのです…
いままでもメロには見せずに何回も破棄していて……。」
「なんだと!なんで勝手に断るんだよ。」

「だって、仕事が忙しくなったら一緒にいられないじゃないですか…新婚なのに…。」


「ニアーーーーーーーー!!!!!!!てめえ!殺ス!!!!」
「痛い、やめてください!!髪ひっぱらないで!」

俺たちはSPKの前で散々やりあった、
こんなくだらない痴話喧嘩を見せられた人間はいないと3人は呆きれきった顔をしている…

一息いれた俺たちは詫びもかねて…仕事を引き受ける事にした。
(俺はいたたまれないと言う気持ちを心の底から理解できたよ……まったく。)



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


送って行くという申し出を断り二人で帰る事にした、
玄関までハルが見送りに来て、ジェバンニがドアを開けてくれる、
外に出ようとする寸前、レスターが少し奥から声をかけてきた。

「ニア、メロ。」

レスターが俺の名前を呼んだのは初めてだな…

「ここでは私が一番年長だからね、人生の先輩のとしてメッセージを贈ろう
トランプタワーと違って、人と人の絆に完成形などないのだよ…、いや、あってはいけないんだ
だって、完成したら次の日からどうする?ずっと同じじゃつまらないだろう?」

「………。」

そうだな…迷って壊して、そしてまた新しく作り出すのが人生なのだろう
俺とニアのこれからもずっと。

俺たちは瞳を合わた、黒い瞳は同じ事を考えているのがわかる…。

「素敵なバースディプレゼントですね。レスター指揮官ありがとうございます。」

「おやすみ…素敵なバースディナイトを…。」



二人で街を歩いた、クリスマス間近のせいかタクシーが拾えず
地下鉄の駅に向かう、街はまだイルミネーションとネオンと人波でさんざめいている。

ニアはたまに外にでても車だから一緒に歩くのなんて何年ぶりだろう?
「ワイミーズハウスの庭を歩いて以来ですかね?」
俺のコートにくるまり腕にすがりついてくる、
「寒くないですか?メロ」
俺は一年中腕出し、へそ出しだから慣れてると言うと
白い息をこぼしながら、天使みたいな顔で笑った。
今年最初の雪が空にちらつき出しニアの髪に羽のように舞い降りる…

クリスマスイルミネーションを反射しきらめく雪の中
俺たちは通行人の目など気にせず、路上で長い長いキスをした。



家についたのはもう13日も終わりかけだった、なんてまあ目まぐるしい一日だったんだろう?
俺はベッドに倒れこむ……ニアはコートを脱ぎ……ん…パジャマまで脱いでいる。

「プレゼントは私…でいいですよね?メロ。」
頬を染めている…。

「お誕生日おめでとうございます、メロ…。」

「あ、ああ…大丈夫なのか、その…さっき乱暴にしたけど…。」
「そうですよ!そりゃ、しょっちゅう乱暴ですけど、今日のは一番酷かったです……
メロは意地悪なんだから!私が好きなくせに!」
「…お前のほうが俺を好きだろ?」
俺はニアを優しくひっぱってベッドに上げながら、うなじに吸い付く…。
「メロのほうが好きですよ…ん…。」
軽い刺激なのにニアはもう興奮しているようだ、路上でのキスがきいているようだ
ニアにはまったく初めての事だろうしな。

すべらかで張りのあるミルク色の肌を求め
ズボンを脱がせながら舌で愛撫をしていく…花びらを吸うように軽く小刻みにくちづけを繰り返すと
ニアの敏感な部分はたちまち赤色に咲き誇る…

「あ…ん…メロ…いいです…はあ…。」

感度のいい最高のプレゼントだ……明日からは忙しくなる…うんと味わっておこう、
ニアが最初に弾けたあとも俺は丹念に優しく甘く体中を舐め上げた、
特に大切な秘所は俺がつけてしまった傷を治すように深く深くいつくしむ…

すっかり俺に溺れているニアは時々軽く痙攣し、切なそうなため息を漏らす…
「メロ…もうだめ…早く…はあ…来てください、あ…。」
俺は爆発しそうになるのを抑えるのに必死になりながら…

「ニア…お前…今は…俺だけだよな?」
まだ少しの嫉妬が残り…理性が飛びそうな俺は思わず口にしてしまう
「当たり前ですよ、今も…今までもこれからもメロだけです!なにいってるんですか!」
ニアが非難するように身体を跳ねて俺ごと腰を動かす
俺はたまらず達してしまった。
まったく…何時の間にこんなテクニックを……
まあ、毎日していれば覚えるか…
ニアの手管は全部俺が開発した俺好みのものだ…

「ああ…ん」
途中で弾けた俺にニアが嬌声とも残念ともとれる声をあげたが、
さっきのニアの返事で上機嫌の俺は息を荒げたものの、すぐに硬さを回復し
そのまま、また進み最深部に到達すると緩やかに前後に運動する、
まったく我ながら元気だな…いったい何回目だ?今日。
ニアが相手だからだ、ニアが愛しいから…俺の熱は留まるところを知らない!
俺の動きに翻弄されニアの息は荒く、水密桃の肌から蜜のように汗がこぼれ出す

「ん…ん……いいです、はあ…気持ちいい…ああメロ。」

「ニア…ニア…。」
すっかり体をかぶせニアの唇をふさぎ呼吸を奪い合うように舌を絡めた、
ニアは腕を首に回し離さない!とばかりに抱きしめる…
心配しなくても俺はどこにも行かない、お前もどこにも行かせない。
俺たちは何度も達しながらも体を繋げたまま、また次の悦楽の淵に飛び込むのを繰り返す、

「ああ…好き…大好きですメロ…。」
「俺のほうが…好きだからな…ハア…。」
「私のほうが好きです…よ?」
「…誕生日忘れたくせに……!」

「もう、また意地悪!…負けず嫌い!あ、…ああん。」

ニアが譲らないから優しくするといったのに激しく動かしてしまった。
今日は俺の誕生日なんだからいいだろう?

窓の外では俺たちに負けじと雪が激しくなってきた、積もるのだろうか?
世界が白銀に包まれるといい…
明日、新しい二人の足跡をつけよう。



END



<「Happy Day」1

2 





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atogaki

他愛ないお話を書こうと思ってはじめたパラレルストーリーなのに
なんのかんのと3部作になってしまいました。

3作読んでくださった方は解ると思いますが、
このシリーズは強引HとラブラブHを2回入れるという
ひな型でなりたっており、頼まれてもいないのに自分に課しておりました。
とりあえず課題をクリアできてスッキリしています。

「同棲編」「プロポーズ編」「新婚編」と、これで完結です。
おつきあいいただいた皆様、ありがとうございました!

2007・12・13