「Trick Art」<後編>
「リドナーはいないな……やっぱり嘘だったのか」 病院内を一通り探したがリドナーの姿を見つけられず、ジェバンニはニアの居る病院を後にすると、SPKの本部へと戻った。 合衆国へ帰る準備をしていたレスターとリドナーは、ジェバンニが入ってくるなり一様に驚いた。 「どうしたのだ!? そ、そのコブは……」 「もしかして、ニアにやられたの?」 「い、いえ、それが……」 そう、ジェバンニの額には大きなコブが出来上がっていたのだ。 そのコブの中心は血が滲んでおり、周りは青紫に変色してしまっていて、かなり痛そうだ。 「男前が台無しね……」 そう言いつつ、リドナーは笑いを堪えている。 レスターも視線を逸らそうとはしているのだが、ついつい、その大きなコブに目が行ってしまう。 ジェバンニは二人に、そのコブが出来た経緯を伝えた。 「何と……メロが生きていたのか……」 「そう……彼が……」 実はリドナーはメロが生きていたことを少なからず喜んでいたのだが、彼がキラ事件捜査中のSPKメンバー殺害容疑者である以上、二人の前でそれを表に出す事は出来なかった。 その代わり…… 「でも、折角のチャンスだったのに残念ね。メロが帰ってきたからには勝ち目は薄いわねっ!」 「!? い、痛たたたた!!」 リドナーはそうジェバンに微笑みかけると、額のコブを指で弾いた。 ほどなくニアは回復し、イギリスへ戻ることとなった。 そこでロジャーと会い、一通りの支度を済ませると、Lとして本格的に稼動する為に『リバプール』へその本拠を構えた。 そしてそこでメロも一緒に暮らす事となった。 いわば二人の新婚生活の始まりである。 「……って、何が『新婚生活』だよ!!」 「……ん? 一体誰に向って言ってるんですか? メロ……」 「!? い、いや、独り言だ……」 「……朝から元気ですね」 そう言って、ニアはベッドに潜り込んだ。 そしてシーツの中、すぐ傍で一緒に横になっていたメロの股間の方へと移動する。 「そう……本当に元気です……昨日あんなにヤったのに」 「ん!!」 さらに、下着をつけずに眠っていた為に剥き出しになっていたメロ自身を掴み、朝勃ちで既に硬くなっていたその先端を咥えた。 「お、おまっ! 朝っぱらから何ヤってんだよ!!」 「ん……んむっ……いえ、目覚めにミルクを一杯頂こうと思いまして。まあ、ミルクといっても『メロのミルク』ですが」 「は!? な、何言ってるんだお前……うっ……」 ニアはメロ自身の根元を握り込むと、先端を咥えたまま首を上下に振った。 そして舌全体でメロのモノを舐めあげる。 その刺激に、メロの太腿の付け根がピクピクと痙攣を起こす。 「あっ……お、おま……え……ちょっ……」 「んむっ……ん……んぐっ……気持ちいいですか?」 さらにニアは口を尖らせると、メロの先端を吸い付きながら、舌先を転がす。 そして握り込んだ根元を上下に動かし、メロ自身を全体的に刺激する。 「うっ……ま、まて……出る、って……ううっ!」 そのニアから与えられる刺激があまりにも心地よく、メロの先端は程なくニアの口内で弾け、ドクドクと迸る精を送り込んだ。 咥え込んだメロ自身を口から放したニアは、コクリと喉を鳴らすと唇の回りを舌なめずりした。 「やはり、メロのミルクは美味しいです」 「何考えてるんだよ、お前……喉が荒れても知らないぞ……」 「ですが、メロのものを吐き出してしまうなんて、その……勿体無くて……」 「……」 シーツから頭を出し、少し俯きながら頬を染めているニアがあまりにも可愛くて、メロはそのままニアへ飛び掛ろうとした。 だが、その時…… トゥルルルルルル……トゥルルルルルル…… 電話のコール音が鳴ったのである。 普段なら自分から滅多に電話を取ることのないニアが、起き上がり受話器の方へと向かった。 『……? 誰か掛かってくるアテでもあるのか?』 空振りをしてしまい、そう訝しげに見つめるメロを気にすることもなく、ニアは電話の相手と会話を交わしている。 「……そうですか、準備は大丈夫だと……ええ、では昼過ぎにそちらへ伺いますので……」 ガチャッ! そして電話の受話器を置いたニアへ、メロが声を掛ける。 「誰からだ? ロジャーか?」 「いえ、リンダからです」 「!? そ、そうか……」 リンダの名前を聞いたメロは、誰が見ても明らかにわかるほど、表情に陰りを見せた。 その理由は、ニアもわかっていた。 それは、彼女がハウスを出た後、マットと恋仲にあったからである。 「それで……今日の午後にリンダの自宅兼アトリエのある『ノーリッジ』へと向かおうと思うのですが、もちろんメロにも来ていただきたいのです」 「……わかった」 「すみませんが、車を運転して頂けますか?」 「ああ……ノーリッジまでなら軽く2時間は掛かるな……」 「はい、では朝食を採って準備に取り掛かりましょう」 「……って、それをやるのは全部俺一人だけどな」 「お願いします」 ふたりはメロが用意した朝食を済ませた。 その後、床に転がって玩具遊びをしているニアを尻目に、メロが外出の準備をしていた。 もしかしたら泊まりになる可能性もあるので、一応着替えなども用意する。 メロだけ一方的に仕事をするのは不公平にも見えるが、ニアはLとしてこれから大変な日々を迎えるので、一緒に住まわせてもらっているメロ自身、その辺は割り切っているのだ。 だがこのときのメロは、自分が『ある立場』でLの仕事に関わることになろうとは、思いもよらなかったのではあるが。 横になりながら手に飛行機の模型を持って動かしているニアへ、メロが尋ねた。 「なあ、今更だけど……何故本拠を合衆国ではなく、このイギリスに置いたんだ? Lとして世界中の事件を担当するには、ここよりもニューヨークやワシントンの方がいいだろうに」 「いえ、そういうゴチャゴチャしたところでは暮らしたくありませんので……必要に応じてワタリを向かわせれば、私本人がそこへ居る必要もありません」 「まあ、そうだな……」 「それに……メロ、覚えていますか?」 「ん? 何だ?」 「私たちがハウスで初めて結ばれたときのことです」 「ああ、それがどうした?」 「ハウスを出て、大人になって、再び出会った時には……」 「……あ!!」 「はい、そう言うことです」 その昔の約束を思い出したメロへ、ニアは懐から一枚の紙を取り出した。 丁寧に折りたたんでいたその紙を広げる。 「合衆国ではまだ同姓婚についての賛否の論争が活発になされていますが、ここイギリスは世界有数の同性愛先進国ですからね」 そのニアの広げた紙には、『シビル・パートナーシップにおける婚姻証明書』の表題があり、その下にしっかりとメロとニアの本名が明記されていた。 「……なあ……お前……その婚姻証明書、本物か……?」 「ええ、もちろんです」 「……じゃあ、俺たちの出生証明書や宣誓供述書はどうしたんだ……?」 「はい、偽造しました」 「……ふぅ……」 わざわざ偽造した必要書類を使ってまで本物の婚姻証明書をつくるという発想は、メロには理解できなかった。 「ニア、そんなものなくても俺たちは……」 「いえ、形式とはいえ、これだけはこだわりたかったんです……私はメロと結婚するのを、本当に心待ちにしてましたので」 メロは危うくニアのことを『可愛いことを言うな』と思いそうになったのだが、よく考えると自分のサインまで偽造されていることに気付き、頭を振った。 だが結婚についての約束は確かにハウス時代にされていたので、そのことについてとやかく言うのはやめる事にした。 「しかし、そんな物をわざわざ懐に入れて持ち歩いてるなんて、聞いたことがないぞ」 「あ、もちろんこれ自体はコピーですよ。本物はメロにもわからないところへ隠しています」 「……あ、そう……」 「これは、私に『悪い虫』がつかないようにするためのお守りです」 そのニアの言葉にジェバンニの顔が浮かび、メロは苦笑いを浮かべた。 「……ま、悪くないかもな……」 「はい、私は一生、メロだけのものです」 そして二人は先ほどの朝食で口にしたジャムよりも、甘い口付けを交わした。 12時を少し回った頃、メロの運転でノーリッジへと到着した二人は、車を街外れのパーキングへと止めるとリンダの自宅へと向かった。 遠目にノーリッジ大聖堂の尖塔を眺めながら、古い教会の続く坂道を二人並んで歩く。 その坂道を下った先にはラベンダー畑が広がり、薄紫色や桃色の絨毯が辺り一面に広がっているような趣である。 「ラベンダーとは、まさに私たちの為にあるような花ですよね」 「ふん、『ピンク・トライアングル』か」 その鮮やかな色彩と上品な香りを楽しみながら、ラベンダー畑の奥、リンダの自宅へと到着した。 ニアが玄関の呼び鈴を鳴らす。 「メロ……リンダへはキラ事件のことは一切伝えていませんので……」 「ああ、わかってる」 程なくリンダが玄関のドアを開けた。 「ふたりともようこそ! メロは本当に久しぶりね!!」 「ああ」 「お邪魔します」 「……でも、ニアから話に聞いてはいたけど……」 「ん、何だ?」 「顔の火傷、本当に酷いわね……」 「……まあな」 メロはその火傷の原因などはどうしようかと考えていたのだが、どうやらニアはその点もフォローを入れておいたようである。 「それにしても、フライドポテトを揚げるだけでそんなに火傷をしちゃうなんて……よっぽど大きな鍋を燃やしちゃったのね……」 「……!? フ、フライドポテト!?」 「え? 違ったっけ?」 「い、いや……」 その火傷のふざけた理由にメロは思わずニアを睨み付けたのだが、ニア本人はいたって真面目に考えていたらしく、何故メロが睨んでくるのかがわからないようである。 「そ、そんなことはどうでもいいだろ? それよりニア、俺は今日ここへ来る理由を聞いてないんだが」 「え!? そうなの? ニア」 「はい、変な先入観を持たずに、ありのままを受け入れて欲しかったもので」 「?」 「そっか……じゃあ、早速だけどアトリエの方へ来てくれるかな?」 リンダはそのままサンダルを履くと、玄関を出て裏庭の方へと二人を案内した。 その花壇に囲まれた日当たりの良い庭に、小さなレンガ造りの建物がある。 どうやらそれが、リンダのアトリエのようだ。 リンダが自分の背丈よりもやや大きい程度の木の扉をノックして、中へ向かって声を掛けた。 「ねえ、マット! 入るわよ」 「!!!? マ、マット……」 その思いも寄らなかった人物の名に、メロは言葉を失い、大きく目を見開き立ち竦んでいた。 それもそのはず、マットはメロと共に行われた高田清美の誘拐作戦において陽動役を担い、キラ信者に追い込まれ射殺されたと思われていたからである。 「さあ、入りましょう……」 マットが生きていることを知っていたニアは驚くこともなく、メロをアトリエの中へと促す。 そして二人が中へ入ると、窓際に立つリンダの傍、車椅子に座った青年が窓の外を眺めていたのである。 頭に何重にも包帯を巻き、ゴーグルやグローブは装着せず、ボーダーシャツも身に纏ってはいなかったが、そこに座っているのは紛れもなくマットであった。 「マット……お、お前、生きていて、く、れたんだな……!!」 メロは感極まって、声と身体を震わせている。 だが、そのメロの様子とは違い、ニアはもの悲しげな表情を浮かべていた。 「マット……! ん……? お、おい……」 しかしマットへ声を掛けるメロであったが、そのマットの反応が普通ではないことに気がついた。 何故なら、メロがいくらマットへ声を掛けても、彼は窓の外を眺めたまま身動きひとつ取らなかったからである。 もしかして耳が聞こえないのであろうか…… 「なあ、ニア……マットの奴、もしかして……」 「耳は聞こえているようなのです……」 しかしそのニアの答えは、メロの想像以上に過酷なものであった。 「目も見えるようですし、手足もまだ怪我が癒えていないとはいえ、何とか動かす程度はできるようです。しかし、頭部へ受けた傷が酷いようでして……」 「!?」 「症状としては重度の痴呆と同じようなものだそうです。一日中身動きも取らずじっとしていることもあるそうです。まともに会話も出来ないので、記憶が残っているのかどうかもわかりません。ただ、時折『トイレ』とか『水』とか、最低限の要求を口にすることはあるようです」 「そ……そん、な……」 その悲痛な表情を浮かべるメロへ、リンダは穏やかな表情で語りかけた。 「でもね、メロ……マットが交通事故に遭った直後、病院へ運ばれたときなんかは、もう九分九厘助からないっていう状態だったらしいの。だけど今、マットはこうして生きていてくれる。私はそれだけでも十分だって、最近思えるようになったんだ」 「リンダはマットを引き取って、ずっと傍で暮らすと決心してくださったのです」 「……」 「マットはもしかしたら記憶を失っているかもしれない。でもね、きっと心のどこかには……私たちが一緒に過ごしたハウスでの思い出が、残っているって信じているの。だから……」 リンダはそう言いながら、辺りの絵の掛け布を外していった。 そこにはリンダの手によって、ハウスでの生活の様子が描き綴られていたのである。 時計台のある、ハウスの礼拝堂 中庭のグラウンドでサッカーをする、金髪に黒い服の少年を中心とする子供たち 噴水の淵に座り、仲良く笑顔を交し合っている男の子と女の子 ロジャーの執務室の窓の下、コスモスが鮮やかに揺れる花壇 正門から中へ向かってくる、ワタリの運転する黒い車 プレイルームでパズルをしている白を纏った少年と、それを遠目に眺める位置で壁にもたれかかっている、ゴーグルを付けたしましまシャツの少年 などなど、それら全てがまるで昨日の光景であったかのように、次々とメロの脳裏に蘇ってきた。 「私は画家になったけど……いつかきっと、マットが自分を取り戻してくれる、そんな絵を描こうと思っているの。それが私の生涯の夢……世界一の画家としての、目標……」 「……ああ、きっと……その夢、叶うと思うぜ……」 「はい、私もそう思います」 「ふふふ、ハウスのトップ二人にお墨付きをもらっちゃった!」 リンダは瞳の端に浮かべていた涙を拭うと、満面の笑みを浮かべた。 それから、3人はアトリエの真ん中のテーブルで、ハーブティーを楽しみ、リンダの描いた絵を眺めながら、昔話に花を咲かせていた。 その3人の話を聞いていたのかどうかはわからないが、時折マットは窓の外を眺めながら、言葉にはならない声を上げていた。 そこそこの時間が経ち、メロとニアの二人は、リバプールへ帰ることにした。 「せっかくなんだから、泊まっていけばいいのに」 「いえ、実は明日の朝一番、ロジャーの元を訪ねなくてはいけないのです」 「そっか……」 リンダは、ニアがLを継ぐことを知らないので、あまり詳しくは言えなかった。 だが、再びここを訪れることを約束すると、惜しみながらも別れの言葉を告げた。 アトリエの扉を開き、メロがマットへと声を掛けた。 「じゃあな、マット。また、来るからな!」 と、その時であった。 「……め……ろ……あり……が、と……」 何と、それまで言葉を発していなかったマットが、メロの名前を口にしたのだ。 「ねえ、ニア! 今、マット……『メロ』って言ったよね!」 「はい、今までに私たちの名前も呼ばれたことは無かったのですが……やはり彼にとってメロの存在は特別なんですね」 「そうね……本当に妬けるわ……」 そう言いつつも、リンダは笑顔を浮かべながら涙を流していた。 「マット……お前……」 メロも溢れる感情を抑えきれないようである。 「ま、また来るからなっ!」 そう言うと、メロは表に向かって駆け出していった。 帰りの車の中、メロとニアの二人は、しばらくの間無言であった。 メロはずっと思いつめたような表情で、ハンドルを握っている。 辺りはすっかりと暗くなり、明かりのない街道には二人の乗る車のヘッドライトだけが、頼りなく浮かんでいた。 「ん!? メロ?」 そこでふと、メロが車を道の脇に寄せて止めた。 「……なあ、ニア……」 「はい」 「マットの奴……俺が、あいつを巻き込むようなことをしなければ、今頃……」 どうやらメロにとって、あのマットの様子は相当堪えたらしい。 ニアと病室で再開してからも、メロはマットのことを口には出さなかった。 自分の所為でマットを死なせてしまったことを、ずっと胸の中へ抱え込んでいたのだ。 だが、こうして生きているマットの姿を見て、傍に寄り添うリンダを見て、逆に自らの中だけでは抱え込めなくなってしまったのであろう。 「メロ……」 そんなメロへ、ニアは精一杯の優しさで語り掛けた。 「マットも自らの責任であなたへ付いてきたんです。彼があなたへ付いてきたかったからこその……結果なのです」 「……しかし……」 「あのような状態になってまで、マットはあなたへ『ありがとう』と礼を述べていました。彼はきっと、自分のしたことに、あなたの役に立てたことに……誇りを持っているのだと思います」 「……」 「ですから、あなたも自らが思う道を歩んで下さい。それが身体を張ってまであなたの役に立とうとした、マットの為でもあります。それに……」 「……ニア……」 「あなたの傍には、ずっと私が居ます。あなたの存在は、私がずっと認め続けてあげます。だから……!?」 ニアが言い終わる前に、メロはニアの胸元に飛び込み、顔を埋めていた。 胸元を徐々に滲ませる冷たさに、ニアはメロの頭を抱え、そっと優しく髪を撫で上げた。 車の中、さすがに窮屈な体勢だったので、ニアは助手席のサイドレバーを引くと、座席の背もたれを完全に横へと倒した。 メロの頭を抱え込んだまま、ニアはしばらくの間じっと横になっていた。 そのニアの表情は、滅多に弱みを見せないメロが、自分の弱さを晒して身を預けてくれていることの満足感で満たされていた。 自分が必要とされているという実感を、ニアは今までにないくらい味わっていた。 ようやくメロが頭を起こしたが、その目は紅く滲んでいた。 「ありがとう、ニア……」 メロはニアへと口付けを落とすと、両手をニアの背中へと回した。 息苦しいほど密着させてくる唇も、背骨が軋むほど強く抱きしめてくる腕も、しかしながら今のニアにとっては心地よいものへと感じられていた。 お互いの唾液が行き交うほどの深いキスを交わしながら、メロはニアのシャツを巻くし上げ、その露になった絹のように滑らかな肌を、指先で愛撫する。 「んッ……」 メロの指が辿る道を、快感が後から付いてくる。 首筋から背中、脇へと伝い、メロの指がニアの胸の先端へと辿り着く。 指先でその蕾を撫でると、ニアの身体が小刻みに震えた。 「んあっ……あ……」 先ほど自分の心を受け入れてくれたニアへ、今度は自分の身体を受け入れてもらいたいと、メロは素直に思った。 ニアのズボン越しに下着の中へ手を突っ込むと、その手を後ろへ回し、指先をニアの後ろの穴へと宛がう。 そしてそこを慣らす為、指先を立てて円を描くように渦巻き状に押え付けていく。 狭い座席の上、天井へ頭を擦りながらも、メロはニアのズボンを下ろし、自身も下着を脱いでいく。 ……ゴォォォオオオ…… 一際眩しいヘッドライトの光が傍を走り、大きなトラックが通過していった。 まだ十分に慣らしきっていなかったニアの後ろだったが、自身を抑えきれなくなってきたメロは、ニアの両腕を掴むと、自身をニアの中へと突き込んでいった。 「くっ……あ、ああっ……め……ろ……」 最初こそ少し痛みが勝っていたニアだが、徐々にメロのモノが自身の中を擦る快感に震え始める。 メロが大きく腰を引くと、ダッシュボードへメロの尻が当たった。 いつもよりも窮屈な体勢であったが、逆にその所為でより密着間が増しているようだ。 メロは徐々に腰の動きを早め、クッションのあまり効かない座席の所為で、車全体がギシギシと揺れ始めた。 「んっ! い、いた……い……です……」 「……やめた方が、いいか?」 そんな気などさらさら無いはずのメロが、あえてニアへと問いかける。 「……め……な……でく……い……」 「……ん? 何だ?」 「やめないで……くだ、さい……あッ……ああっ!!」 ニアのその言葉に、メロは座席の背もたれごとまとめてニアの身体を抱えた。 押さえつけてくるメロの身体と背もたれに挟まれながら、ニアはひたすらメロへと突き上げられる。 メロの動きと車の揺れが、最高潮に達しようとしていた。 「……ニア……あ、ありがとう……! ううっ!!」 「め……メロ……あああっ……!!」 メロはニアの中へ、迸る精を注ぎ込んだ。 ニアもまた、自身への刺激はそれほどなかったものの、与えられた満足感の大きさに、身体を捩じらせ達していった…… スヤスヤと眠るニアを助手席に横たえ、メロは再びハンドルを握った。 「……ん!? しまった、手袋を忘れちまった……」 どうやらリンダのアトリエでハーブティーを飲むときに外した手袋を、そのまま忘れてきてしまったようだ。 その手袋はメロのお気に入りで、まだそれほどリンダの家から離れていなかったこともあり、メロは一旦手袋を取りに戻ることにした。 今度は時間も掛からない為、パーキングには止めずにラベンダー畑の横、リンダの家の庭の前に車を着けた。 そして中へ入って玄関の呼び鈴を鳴らそうとしたのだが、ふとアトリエの方を覗くと、まだ窓の隙間から光が零れているのが見えた。 「ああ、まだあっちにいるんだな。絵でも描いているのか?」 そう思い、メロがアトリエの扉の前まで来たときであった。 中から談笑が聞こえてきたのだ。 それは若い男と女のものであったが、片方はリンダのものであった。 そしてもう片方の男の声は…… 「それにしてもリンダ、絵だけでなく演技の方も結構いい線いけるんじゃない?」 「ふふふ、そうかな? 自分でもうまく涙を出せたときは、ちょっと驚いたけど……そういうマットこそ、迫真の演技だったわよ?」 「いやー……ただ単にじっとしてるだけってのが、あんなに辛いとは思わなかったよ……それに座りっぱなしで腰とお尻が痛いし」 「でも、メロにはちょっと悪いことしちゃったわね」 「まあね。でも他ならぬニアの頼みだし、後で『メロが来てくれたおかげで、良くなったよ!』なんて言えば、何とかなるんじゃない?」 「そうかな……?」 「ははは、それに別れ際に名前を呼んだときのメロの顔、必死に涙を堪えちゃって可愛かったよなっ!」 「ああ、そうかい」 「そうそう、あれを『鬼の目にも涙』って…………あの……」 「ん、どうした? マット」 「……どうして、メロがここに居るの?」 「さあ、どうしてだろうな……」 「…………もしかして……怒ってる……?」 「さあ、どうだろうな……」 俯きながら肩を震わせているメロの表情は、前髪に隠れてしまって伺えなかった。 しかし身体全体から発せられる只ならぬオーラに、マットは竦んで動けなかった。 ガチャッ! 「メロ、どうしてリンダの家へ戻って…………あ……」 「……ごめん、ニア……バレちゃった……」 「……マット……説明しろ……」 「い、いや、そのね……ニアがさ、『一度でいいから落ち込んで甘えてくるメロを、慰めてみたいです』なんて言うもんだから、その……」 「で、ですがこの作戦を立てたのは、マットが……」 「……そんなのは……どっちでも…………関係ないっ!!!」 「わっ!!! い、痛いって、メロ!! まだ傷が治ってないんだからっ!!」 「マットは本当に一週間前まで死に掛けていたんです。その辺で……」 「うるさいっ!! お前ら、俺をハメやがって……! ただで済むと思ってるのか!!」 「はぁ……やっぱり平和って、いいわね……」 リンダは立て掛けていた絵を全て避難させると、温めなおしたハーブティーをそっと口にした。 |
------------------------------ junさんにキリリクをゲットしてリクエストして書いていただいた。メロニアです。 エロシーンたっぷり入れるように注文をつけました(笑)。 新婚さんでHシーン3回以上、全部場所は別という指定です、鬼か^^! こちらでも展示したいと申し出た所、ご快諾いただきありがとうございます。 どんでん返しの連続に読者の皆様も意表をつかれ楽しまれたかと思います!Hシーンは言うに及ばず!(笑) junさんあらためて素敵な作品をありがとうございました^^。 |
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