その夜のロザリオの件は僕の中にしこりとして残っていた、
そんないやな気分を払拭したいのと過ぎゆくワイミーズハウスでの最後の夏を
惜しむ気持ちの両方で僕はあるプランを思いついた、
少しの冒険と本当に2人だけの一日の思い出を作るために。

「外泊ですか?2人で?」
「ああ、もちろん内緒でだ。」
僕は深海のような図書館の一角でニアに囁いた。

ワイミーズハウスの広い敷地の奥に庭師兼門番の小屋があった。
僕はその庭師の爺さんと懇意にしており、
彼が休暇で娘の嫁ぎ先に行っている間、
自由に使っていいと合い鍵をもらっていたのだ。
そこに忍んでいって休暇の最後の夜を過ごしたかった。
一緒にキャンプのように食事を作ろう、星を見て過ごそうと語る
僕をニアはだまって見つめている、
こういうアウトドア的な遊びはニアの趣味では
ないのは百も承知だが僕が言いだせばニアはついてくるだろう
僕は妙に自信があった。

「おもしろそう…ですね。」
ニアはやはり承知した、僕は得意な気持ちと楽しみな気持ちとが折り混ざり
少々興奮して2人でプランニングを綿密に開始する。

ニアはその日は体の具合が悪いと食事を断り部屋に籠もっている事にして
監視の死角をぬって外に出る方法、
僕は街への外出許可をもらい小屋に行く、帰館証明を上手く誤魔化す方法を
2人でそりゃあ熱心に考えた。

ふとニアが顔をかがめ声をたてて笑った。

「私たち馬鹿みたいですね。」
「まったくだ。」
僕も笑った。

気まずいロザリオの件は僕のどこかへ行ってしまったようで、とても気持ちが良かった。
そして、あらためて中断していた問いを聞いてみる気分になった。

「ニアはいつから…その…僕の事を意識してた?」

ニアは突然の問いにきょとんとしたが、しばし考え答える
「そうですねえ、随分前です…もう2・3年になるでしょうか…」
そんなに前から?それは意外な回答だった。

ニアは思考をめぐらせている、そんな時は決まって無表情に見える事を
僕はこの半年で知っている。

「以前、私の噂がハウスで広まった事があったでしょう?」

ああ…

それは嫌な噂だった。

昔ニアをいじめた級友があいついで病気になったり
失踪したという話が誰からともなく伝わり
ニアをいじめると怖ろしい事がおきるという噂が
感染するようにハウス内に広まっていたのだった。
「あの頃、噂のボス格の少年をメロがひっぱたいたじゃないですか、覚えてます?」
確かにそんな事があった…僕はその頃から成績は2番で1番のニアが憎たらしかったのだが
必ず巻き返してやると懸命に勉強していた。
だが、その少年らはたいした努力もしないくせニアに負けている事を悔しがっていた、
頭で負けた腹いせに、人を化け物扱いするような陰湿な噂を流す人間は嫌いだった。
食堂でそんな話を大声でして食事が台無しにされるのが嫌でぶちのめしてやったのだ。
それ以来…噂をするものはいなくなり…みんな忘れてしまった。

あの場所にニアもいたのか…そしてそれを見てたのか…
考えてもみなかったので僕はちょっとときめいた、まるでヒーローみたいじゃないか。
僕は照れくささもあって早口でしゃべる、
「ああ、確かにそんな事あったな、でもさ、たいした事じゃないよ、
あんな卑怯な作り話をするヤツは最低なんだから
ぶちのめすのは当然だからな。」

いつの間にか夕闇がせまりニアの顔は逆光で薄暗い…
そのセピアの光の中、ニアの小さな口が動き…その口は驚くべき言葉をはなった。

「あの、噂を流したのは私ですよ、メロ。」

僕はニアが何を言っているのか、しばらく意味がわからなかった…。


「私はあの頃メロが殴った連中のグループにしばしば嫌がらせを受けていたんです、
物がなくなるとか、机を水びたしにされる程度でしたが…。こういう事はほおっておくと
エスカレートしますし、私もうざったかったですしね。」
僕は黙ってニアを見つめるしかなかった…
「そこで、自分で不吉な噂を流しました、そうしたら案の定、物理的な嫌がらせは
ピタリとやみましたよ…。」
ニアは窓の外から暮れかかる世界を見下ろす…
「不思議ですね…こんな先進国に住み、その中でも優秀な頭脳を持った人間が集まっている
施設なのに、あんなオカルティックな噂を間に受ける人間が大勢出るなんて…。
少し調べれば事実ではない事くらいわかるのに。

人はどんな時代でも目に見えないものに対する恐怖感を持っているのですね。
たとえば、私に親切にすると良い事がおきるという噂を流したらどうだったでしょう?
あんなに効果は得られなかったと思います。
人は未来の幸福を得るより現在の平穏が失われる事を恐れるのです。
死・不幸それらに対する恐怖は人の冷静な思考を麻痺させるようですね、
そして、それが狂信に発展するのでしょうか?」
とうとうと語るニアに僕はボソリとつぶやいた。

「お前…。」
「なんでしょう?メロ。」

「…感じ悪い…。」

ニアは黙ったが、少しの沈黙の後切り返してきた。
「一方的に嫌がらせを受けたのは私ですよ?なのに私が悪いのでしょうか?
彼らだってロジャーにいいつけられて叱られるより自発的にいじめをやめられたのです。
円満解決じゃないですか?」
これが、赤ちゃんみたいに僕にすがったニアだろうか?
「目線が上から過ぎるんだよ、そうして情報を操作して人を操るなんて…
人が悪い!」
「………。」
ニアは不服そうに髪を指で巻いていじる…
僕らはしばらく黙っていた、辺りはいつの間にか闇に満ちている、
口を開いたのはニアのほうだった。
「メロは私の噂のために喧嘩をしたのだから、それの大元が私と知ったら怒るのは当然ですね…
すいませんでした。」

いや、今、僕がわだかまっているのはそんな事ではない気がする…

僕はじっとニアを見た、夕闇の中よく顔は見えない…
だけど大きな白目だけが光りを放つように浮いて見える…
だめだ…  考えては…

僕は時々ニアが怖くなるのだ。
こんなに上手くいってるのに壊しては駄目だ、
余計な事は考えずに封印してしまおう!そうしなければ…。
「いいよ…もう。行こう。」
僕はそう言ってニアの手をつかみ図書館を後にする、
ニアは僕が手をつないだ事がうれしかったようで強く握り返してきた。
あたたかく、柔らかい手のひらに僕は安堵し、
同時にニアがまた欲しくなった。
僕は出口の手前でニアにキスをして、そのまま床に押し崩し倒す

「こんな所で?……」
「大丈夫…闇夜だから…。」

ニアは僕の首に手を回す…いつも通り僕のなすがままのニアに
安心し気持ちがほぐれた…。
パジャマのすそから手入れて暖かくて柔らかい肌を指でなぞり
何度抱いても新鮮な、その体をまた開いていく、
ニアは僕だけが知っている反応を返してくる…
必死で声を抑える様子が可愛くて少し乱暴にしてしまう、
僕はいつもの行為に夢中になり、
さっきの会話のわだかまりが泡のように頭から消えていくのがうれしかった。
ニアが思わず漏らす小さな嬌声がさらに浄化を加速させる
もう僕は胸のつっかえをすっかり忘れ、軽やかな気分で事を進めた。


でも本当はそれはずっと僕の心に引っかかっていたのだった…
まるで胸のロザリオのように。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


僕はハウスの裏庭を抜け、木立の日陰を選びながら
庭番の小屋に向かって歩いている、
今日は小冒険を決行する、夏休みの最後の日だった。
段取りは全て上手く行き、あとは小屋でニアと落ち合うだけだ。
ハウスの敷地の隅にある、その小屋は裏の林と隣接し、
建物の横には池があり、水鳥が泳ぎ、取り残されたすももの
甘い匂いが風に乗って香る、
さながらおとぎ話に出てきそうな懐かしさと安らぎに満ちている。

ニアはまだ着いていなかった。
僕は木陰の下の岩に腰掛けニアを外で待つ事にする。
『大丈夫だろうか?あいつ一人で外を出歩くの無謀だったか?』
少し不安になったが、すぐうち消した。
あいつに心配なんて無用だ、いつも通り上手くやるよ、なんでもな…
消えたと思った図書館での会話が脳裏によみがえってくる…

全てはニアの計算づくだったのか。
ニアの手の平で踊らされた自分に較べ割り切った策士のニア…

ニアは結果が全てなのだろう、経過で噂をされたり、
避けられたりすることは彼にはなんでもない事なんだろう、
そして目的通り嫌がらせを自然にやめさせ、
結局は不思議な噂で自分のカリスマ性まであげてしまった。
院内の人間を噂を流すもの流さないものにふりわけ
自分に有害か無害かリサーチする目的もあったに違いない…
Lはこの事をきっと知っているだろう…

そして僕とニアのどちらを評価したかは決まりきっている。

僕は手持ちぶさたで空を見上げぼんやりした…。
昔はよくここへ来た…
もう随分前、ハウスに入り立ての頃。
僕はその頃からLを継ぐ野心に燃えていた、
入所してなにをするべきか?
僕は院内の派閥を理解し、自分なりのネットワークを形成することに
余念がなかった。
沢山の友達を作り、上級生とも上手く折り合っていった。
(時折ついケンカはしたけど…)
僕の社交性や新しい場所にも怖じ気つかない行動力は
Lからも高く評価されているとロジャーに告げられ有頂天になった、
くだらない過去を蹴飛ばして未来に飛躍していけるようで
毎日、楽しくて充実していた、

それなのに、僕は時々どうしようもなく一人になりたくて
なにかわめき散らしながら裏庭を走りぬけ、息が絶えそうになった頃
この場所に座り込んだ、
そして日がな一日、空とロザリオをかわるがわる眺めていたのだった。

あの頃のそんな僕を見かけた庭師は僕にお菓子をごちそうしてくれた、

お茶を飲みながら彼は息子を幼い頃なくしたのだとつぶいた
丁度僕くらいの年だったという。
僕らは遠くの空を見る…そこには青い空間と白い雲しかないのに
いつまでも見つめていた。
僕らは何が見たかったんだろう?

僕は首にかけたロザリオを服の中から取りだし、つまんで宙に浮かべた。
ロザリオはもちろん高価なものではなかったが、
売れば2ヶ月は食いつなげるものらしい。

僕を捨てた人間がロザリオを首にかける感触をまだ覚えている…。
なぜこれを僕に渡したのだろう?
金目のものなら売り飛ばせばいい、
僕が大切なのか?じゃあなぜ僕を手放す!
ロザリオが免罪符のつもりか?ふざけんな!

しばらく胸の奥にしまい込んでいた過去への諸々に感情がロザリオを
見ていると吹き出しそうで胸が苦しくなった、
太陽がロザリオの端に反射して僕の目を突き刺す
目の前も真っ白になっていく…

「!!」

驚いた、白いと思ったのら目の前にいつのまにかニアが来ていた!
見られた…きっと情けない顔でロザリオを眺めていた自分を!
慌てて手をひっこめた。

「お、遅かったな…ニア!」
「すいません、荷物が重かったので…。」
ニアは自分のバックを地面におろし、その拍子に中身がこぼれる
ロボットやら飛行機やら、
「お前が持って来てるの、全部自分のおもちゃじゃないか!」
「だって…。」
「今日は2人だけで過ごすためにここにきたんだろ!?」
僕は呆れておもちゃをカバンにつめて、話題をそらすように
急いで小屋の中に向かった。

しばらく締め切っていたその小屋の窓をあけ空気を入れ換える
小さいけど片づいた部屋は居心地が良かった、
脇につまれた薪から新鮮な木のいい匂いがする。

「煉瓦の暖炉に…素朴な木のテーブルと椅子、壁には薪を割る斧、
三角の天井…ミニチュア模型のような部屋ですね。」
ニアも思いのほか気に入ったようだ。
「バカだなあ、模型がこの部屋みたいなんじゃないか。」
「そういえばそうですね。」
ベッドに腰掛けて2人で笑った、普段と違う空間にいるだけで
本当に遠くに旅に来たような気分になる。
僕は軽くニアの小さな口にキスをした。

午後のお茶に以前、授業で作ったスコーンを焼く事にした、
ニアは面倒がったが、強引にやらせてみるとレシピさえみず
器用に分量を量っている、
教科書が頭の中に入っているのかと思うと驚きだ。
2人でこんな家事めいた事をしていると一緒にくらしているような気分に
なってくきた…数年後にはこれが日常になるんだろうか?
なれるんだろうか?
僕らは器用にスコーンのたねを作り
古風な鉄のオーブンに入れ火を炊く…
あとは焼き上がりを待つだけだ、

「メロ、なんだか。私たち」
「なに?」
「家族みたいですね。」
僕が思っていた事をニアが言った。

かって僕にもいた家族…

「いつかはこうして暮らせるんでしょうか?」
「お前次第だな…、さぼってんじゃねーよ。」
ニアは後片づけには興味がないようで、またおもちゃで遊びだしている。
コイツと暮らしたら僕がほとんど面倒をみなきゃいけないな、
考えものかもしれない。
部屋中にバターのいい香りが満ちてくる
幸せの象徴みたいだ。

黄金に焼き上がったスコーンにニアはクローテッドクリームをつけ
僕はチョコレートソースで食べる事にした。
オーブンですっかり熱くなった部屋を脱出し、
ポットにお茶をつめ池に面した木の下にラグを引きティータイムの用意をする
準備が出来た頃にはニアはラグにごろごろ転がりはじめ

「一生分の家事をした気分です。」
とかいいやがった。

やっぱりこいつと暮らすのはやめようか?……。
転がりながらニアはお茶を飲みだした…行儀悪いが
まあ、こいつはもう仕方ないか…。
スコーンをほおばる、出来たての香ばしさが舌の上で踊る
「少し固いかな?もうちょっと生地を寝かせたほうが良かったのかな?」
「でも、おいしいですよ。」
「うん、おいしいな。」
2人で作り戸外の空気の中でのお茶会はこの上なく極上の味がする、
来て良かったと僕は自分のプランに満足した。
木漏れ日がラグに作る模様を浴びて転がっているニアの横に僕も身を横たえ、
葉ずれの音の中キスをする
「…チョコがつきます…よ。」
「いいよ、なめて綺麗にしてやるから。」
欲望のキスというより親愛のキスに近い…
柔らかいニアに触れていると、このまま昼寝がしたくなった。

「ニア眠ろう。」
「はい、眠りましょう。」

ニアは僕の胸に顔を埋めてくる……可愛いな…
僕が銀色の頭を撫でると、それに呼応するかのようにニアが頬ずりをする……
すると小さく

「いた…」

という声がした。
ニアの顔を手で包んで持ち上げるとほほにかすかに傷がついている…
「どうした?…」
聞かなくてもすぐわかった、僕がさっき服の中にしまい忘れたロザリオの
ふちでこすってしまったのだ。
「………」
「平気ですよ、こんなの。」
ニアは言うが僕はロザリオが忌々しくなった、
先日からずっとこいつに振り回されている気分だ…

なのに後生大事にそれをつけている自分……
……過去なんてここへ入る時に、名前と一緒に捨てたはずなのに!

木の上にとまっていたカラスがないている
なんだか僕をあざ笑っているような声に聞こえて気分が悪い

僕は自分の首の後ろに手を回しロザリオを引きちぎるようにはずし
顔をそむけニアに突きつけた。
「やるよ。」

ニアは身を起こし、しばし困ったふうな顔をして首をふった。
「いりません。」
「この前、欲しいっていったじゃないか。」
「あの時は…メロにとってそんなに大事なものだった知らなかったから
気軽に言えたんです。」
ニアの言葉は僕の琴線を刺激した。
「そんなに、ってなんだよ。ニアが何を知ってるんだよ。」
「だって、さっきも…。」
やっぱり見てたのか…!
「いいから受け取れよ、なに意地はってんだよ。」
意地を張ってるのは僕なのだ、心の奥でもうやめろよという声がするが
動きだしたら止められない僕の悪いくせだ、
ニアが受けとらない事にじれて、僕はロザリオを地面に叩きつけた。
「お前がいらないならいいよ、捨てる!」
ニアは転がったロザリオを目で追うが拾おうとはしない
また2人の間に気まずい沈黙が流れる…
なんですぐこうなってしまうのだろう、
今日は最高の夏の日にするはずだったのに…
僕がここを去る夢を見て震える小さなニアに2人だけの秘密の
思い出をあげたかったのに…

僕は地面で光るロザリオをみつめた。
僕を振り回すな、僕を見るな、僕に執着させるな!支配するな。
過去と一緒に消えてしまえ!

ふいに黒い爆弾が天からすごい勢いで落ちてきた。
意表をつかれ僕は腰をうかせた、
黒いそれはロザリオと一緒に舞い上がる

カラスだった!
ヒカリモノを奪いにきたのだ。
「メロ!」
ニアが声をあげる、僕は反射的に地面の小石を拾い中空を飛ぶ
翼に投げつけた。
「ギャ」

見事、石はカラスの胴体に命中し鳴き声をあげロザリオを口から落とし飛び去っていく、
「やった!」

ぱしゃん…

ロザリオはそのまま下の池に落下し、水中に飲み込まれていった。
僕は淵まで駆け寄る!
そこには小さな波紋が残っているだけでロザリオはもう見えなかった。

緑の水の底に沈んだのだ。

ニアも追いついてそれを見ている…
僕の服をひっぱった…
また見られた…喪失感に震えている自分を…
捨てたといいながら、なんだこのあわてぶりはみっともない!
「もういいよ、行こう。どうせいらない物だし。」
「こんな時まで意地を張らないでください。」
「なんだと!!」
ニアの言い様に僕は声を荒げてしまった、
「だって大事な思い出の品なんでしょう?昔の…」

いきなりニアの顔が僕の目の前にあった、
僕が彼の胸ぐらをつかみ引き寄せていたのだ、無意識に。
ニアは苦しそうな顔をしている、でも僕は怒りでそんな事に気が回らない!
「きいた風な口きくな、生意気なんだよ!。僕の何がわかるってんだ!
思い出なんかなくて平気だ僕は!」
そうだ僕を捨てた人間なんてくたばってしまえ、
いや、どうせもうどっかで野たれてるさ、ざまあみろ!
くだらない!卑怯者め…!
吹き出した感情が止められず震える僕をニアは抱きしめようと手を回してくる
僕はそれを振り払った。

「ふざけんな!同情のつもりか。」

僕はニアを突き飛ばし駆けだした、
振り向くとしりもちをついて、僕を見ていた。
僕はニアを無視しそのまましばらく全力で疾走した、
あのままニアに抱きしめられたら心の中の全部をニアに
読まれそうな気になったのだ、
こんなに乱れている僕を、こんなに割り切れない僕を

僕は女の子に間違えられてブチキレてもハウスに入った頃から髪型を変えていなかった…
過去を捨てたといいながらロザリオを捨てれなかった、

なぜだ?

成長しても、すぐ僕だとわかるようにだ!
いつか僕を迎えに来るなんて甘ったるい幻想が心のどこかにあったからだ!
空とロザリオを見ながらいつまでも待っていた。
そんな日が来ない事位わかっているくせに、
くだらない!!くだらない!!馬鹿馬鹿しい!

僕は森の中まで走っていき、大きな木の幹にすがり拳をたたきつけ
「畜生!畜生!」
誰に言っているのかもわからぬまま叩いた…。
自分でもどうしようもない過去の哀惜、喪失、未来の不安が襲ってきて
僕は泣きながら叩き続けた……



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