4
横に眠る少しなで肩の白い裸体を後ろから抱きしめ 首筋にそっとキスをする…。 二アはくすぐったそうに軽く笑う。 僕は耳元にくちびるを寄せ、軽く耳たぶを噛みながら 「いいだろ…な?」 ニアはギクリとしたように 「またですか…?無理です…昨夜も今日も3回もだなんて…。 …シーツの洗濯をごまかすのも、どんなに私が苦労してるか…。」 気弱に泣き言のような声で答える。 僕らはあの夜から、ほとんど毎晩のように、 こうしてベッドの上で体を重ねて愛し合っている。 僕はニアの不平にはおかまいなしに手を胸に回し 小さな淡い色の突起をいじる。 僕らはとても勉強熱心なので、 今では、もうお互いの体の高まる部分は知り尽くしていた。 「あ……フウ…。」 ニアはため息をもらし、観念したのか 「しょうがないですね…本当に本当に…後、1回ですよ?」 と、僕にまた体を開いた。 ベッドでのニアは結局はいつも僕の言う事を聞く。 それが僕の征服欲を満たし、雄の本能を充実させ僕の欲望は どんどん盛んになっていく。 毎日浴びるようにニアを味わい、最初、僕はとても満ち足りていた はずなのに、今は夜が短いのが不満だ。 もっと、ずっと24時間、2人でいたいのに…。 僕は不服を彼の体にぶつけるように情熱的に腰をうちつける、 夜の部屋の中は肉体のぶつかる音、体からこぼれる水の音、 2つの心臓の音とニアの甘い嬌声が響いていた…。 その日も、いつものようにロープを伝いニアの部屋に忍んだ。 二アはいつものように白いパジャマで迎えてくれる。 抱きしめ、抱き上げてベッドまで連れていく。 僕を迎えるためシャワーを浴びた後のニアの体は ここちよいシャボンのかおりを漂わせていた。 そして、いつものようにキスをしながらパジャマの上下を脱がせる、 ふと、ニアの足元を見ると、もこもこした白い靴下がおいてけぼりに なってるのが可愛かったので、そのままにして 僕はニアを洗い立てのシーツの上に押し倒した。 するとニアは僕に組み伏せられたまま、足を使って靴下を脱ごうとする。 「おい、脱ぐなよ。そのままにしとけ。」 「…なぜですか?」 「なんか、そそるじゃん、そのほうが。」 ニアは呆れたように半目で僕を見る。 「幼児趣味ですか?メロ、あなた若いのに終わってますね…。」 ニアの減らず口はなかなか治らないようだ……。 ◇◇ 次の日、僕はちょっとお仕置きしてやろうと考えた。 学校での昼休みや放課後、僕はわざとらしいほど友人たちと はしゃぎながら、遊戯室の床で1人パズルをしているニアの前を通り過ぎた。 下級生の女の子からチョコをもらったと自慢したり、 両隣の級友と両肩を組んだりしてニアに見せ付けた。 僕には沢山の友人がいる、でも生意気なニアはいつも1人だ。 お前には僕しかいないんだ!と思い知らせてやりたかった。 僕は切なげにニアが振り向くのを期待して横目で見張ってたが ニアは僕の存在にすら気づかないように、精密なマシンのように Lのパズルを組み立てては壊していた。 ムカツく……。 今夜はニアの部屋になんか行くもんか! いや、もうずっと!行ってやんない! 僕の決心はたった3日で、もろくも崩れ去った、 もうニアのいない1人の寝床がさみしくてしかたない。 体を抱きたいだけじゃない、ニアの存在そのものが いつのまにか僕の心のほとんどを占めているのに気づく。 僕は夜のしじまにロープを投げニアの部屋に下りていった。 ニアが怒って窓を開けてくれなかったらどうしよう? だが、それは杞憂だった。 窓が開いている! ニアは窓枠に肘をつき夜の空を見上げていた。 そして僕の姿を見つけると、それはうれしそうに瞳を見開き 腕を全開にした! 『こいつ…僕を待ってたのか!』 部屋に飛び込んだ僕にニアは無言で抱きつき、 僕の肩に顔をうずめ思いっきりギュッツと抱きしめてきた。 その体格からは信じられない馬鹿力だ! 「いてーよ!骨が折れる、殺す気か!?」 僕が怒鳴ると、やっと力を抜いた…。 僕は肩にうずめたニアの顔を両手ですくいあげるようにして 顔を見つめる…。 頬を少しふくらませて、唇をつきだし、上目づかいに僕を見上げた 瞳は少し潤んでるようだ。 「怒ってる?」 「………」 ニアは無言のまま首を横にふる、頬が冷たい… 手を滑らせると首も肩も夜風に冷え切っている、 窓辺で何時間僕を待っていたのだろう? 僕はニアに負けないように力を込めて彼の体を抱き返した。 熱い湯をはったバスタブに2人で浸かり冷えた体を温める… 僕は広げた足に間にニアを座らせ後ろから肩と背中をだきしめ 体を密着させた。僕の熱で早くニアを暖めたくて… ユーカリのアロマキャンドルをともし気持ちをリラックスさせる キャンドルの火がニアの髪を僕と同じ金色に染めた。 僕は自分と二アが同化したようで、うれしかった。 「ごめんな。」 僕は素直にあやまった。 「僕が来ない間なにしてた?」 ニアはチャプチャプと水音をさせ髪をいじりながら 「…メロがもう来なかったらどうしようと思ってました。」 僕はたまらない気持ちになる! 一途なニアが、僕を大好きなニアが愛しくてしょうがない。 そんなニアに子供じみた意地悪や嗜虐心をぶつけた自分が 嫌でしょうがない、なんて心が狭いんだ僕は! ニアを離したくない、ニアをひとりぼっちになんてしたくない。 「なあ、僕達、昼間も一緒にいようよ…グループなら僕らの関係も バレないだろ?」 ニアは突然の提案を言い出す僕を首をひねって見る。 「お前の好きそうな部屋での遊びならいいだろ、リンダやマットって 知ってるだろ?あいつらなら気さくだしいいだろ?な! 僕はもっとニアといたいんだ…」 彼は髪をひと房持ち上げ、先端の雫がお湯に落ちるまで少し考えた。 「正直、集団行動はあまり興味はありませんが…。」 「メロと一緒にいられるならいいです。」 僕を振りかえりニアが微笑む…。僕はニアのほほを手で引き寄る すがしいハーブのにおいとオレンジ色の明かりの中 すっかり温まった僕らは3日ぶりのキスをした。 ◇◇ 「メンツ足りないって言ってただろ?こいつ、 その辺に落ちてたから連れてきた。」 僕はニアのパジャマの首ねっこをつかみ談話室に入っていった。 さも偶然ニアに会ったかのように。 集まってた皆はニアがゲームにくわわる事に驚いたようだが、 如才なく大人な対応をしてくれる。 円卓を囲みポーカーをやることになっていた。 男だけならコインを賭けるのだが今日は女の子もいるので 健全にチョコボンボンだ。 僕の好きな銘柄だったので、小銭よりむしろ腕がなる。 「ポーカーですか…もっと頭を使うゲームのほうがいいのですが…。」 ニアは口を尖らす。 混ぜておいてもらってなんて口を利くんだか、こいつは! 「ポーカーは心理戦よ!駆け引きや推理力を養うのに役だつわ。」 とりなしてくれて…ありがとうリンダ… 僕とニアの関係がばれないようわざと離れて座った。 正面にニアがいる、片手にロボットの玩具をかかえ、 立て膝をつき、やる気なさそうにカードをめくる。 この様子だとポーカーは苦手らしいな、 ポーカーフェイスはお手のものだと思っていたが…。 まあ、今日は僕の実力を見せてやろう、僕は仲間うちではポーカーは常勝なのだ。 「おい!ニア!」 僕は思わずどなってしまった。ポーカーのメンバーも他の談話室にたむろってる 連中も僕をみる、そしてニアを見る、僕の前はチョコボンボンはそこをつき ニアは山積みのチョコでピラミッドを作るのに熱中してる。 「お前、イカサマをやっただろう!」 「やってませんよ。」 「嘘だ、確率65万分の1のロイヤルストレートフラッシュが続けて出るはず ないだろ有り得ない!」 周り中は驚嘆している。 「だから、他のゲームにしようと言ったじゃないですか…、こうなると思ってたんです。」 ニアは顔をしかめて言う。 「私は運がいいんですよ。」 ざわめいた部屋が一瞬静まり返ったような気がした……。 夕食を告げる鐘の音が鳴る。 いつの間にかあたりは夕暮れだった、黒いシルエットの木々に 鳥たちが帰ってきてギャアギャアと鳴いている… 皆、はっと我に帰り、食堂に向かいだす。 「私はいらないので、あげます。」 ニアはチョコのピラミッドをそのままにして部屋を出ていった。 ニアがいなくなると、器用に積み上げられたピラミッドは 均整を失ったようにバラバラとくずれて床に転がっていった…。 「まだ怒ってますかメロ?」 枕の上から僕を見上げてニアが言う。 「私は本当にイカサマなんてしていませんよ?」 腕を立て、裸のニアを見下ろしながら僕が答える。 「わかってるよ、欲しくもないボンボンのためにそんな事する 必要ないからな。」 きっと今日はビギナーズラックだったのだろう。ニアは確かに 強運の持ち主なのだろう、天才に生まれた事自体ついている。 でも、それなら僕だって同じだ…。 ニアの瞳に視線を落とす…僕に似ている黒い瞳… その目にふっと何かが、うつり瞬く間に消えた。 僕は目をこらす。 「どうしました?」 「いや…」僕はニアの上から体を転がし横になった。 「不思議だな…お前の目、時折、なにかが走る気がする…。」 最初に遊戯室でニアにキスした時もそうだった、でもあの時とは 違う気もする、今、移ろったものは小さな闇の結晶のような気がした…。 ニアは僕の言葉を聞くと顔を天井に向けたまま、つぶやく。 「それの正体は絶望かもしれませんね…。」 「?、?。」 「私は運がいいといいましたけど、その代償に私の目は絶望を映すんですよ。」 よくわからない… 「ニア、お前、ワイミーズハウスに来る前…。」 なにか、とてもつらいことがあったという意味だろうか? だが、ニアはぼんやりと、だがキッパリといった。 「いいえ、これから起こることですよ……。」 ますます訳がわからない。 「謎かけ遊び?マザーグースかよ!?」 マザーグースは英国の伝承童謡だ。 この国の陰鬱な天候と血なまぐさい歴史が生み出した 残酷で不気味で奇妙な詩が多い。 Humpty Dumpty sat on a wall, Humpty Dumpty had a great fall; All the King's horses, and all the King's men Couldn't put Humpty Dumpty together again. ハンプティ・ダンプティ?塀の上 ハンプティ・ダンプティ?おっこちた 王様の馬でも 兵隊みんなでも ハンプティ・ダンプティは戻せない 僕は軽く諳んじてみた。たまごが塀の上で揺れている 今にも均衡を失いまっさかさま…。 いつの間にかニアは横を向き、僕と目が合った。 虚空をみるような瞳、何もみていないような、 全てを見透かすような瞳…。 ニアは不思議な所がある…。 合理的な思考で率直すぎる性格のくせに謎めいた事を言う…。 いや、ニアの存在自体が非現実めいて感じる時もある、 ニアの部屋に監視カメラをつけてみたい… 1人っきりの時、彼は闇の中、魔法で ブリキの人形を躍らせてるんじゃないだろうか? 僕はなんだかニアの目をみているのが怖くなり 瞼にくちづけをしてその目を閉じさせた。 そして、また裸の体を重ねた。しっとりと張りのある肌、 抱きしめる体の厚み、熱い体温が実在感を感じさせて 僕をほっとさせる 僕は愛撫を繰り返し、彼の中に入っていく 「ああ、あん…んん…あん…。」 ニアが甘い声をもらしだす。 僕とつながりながらハチミツのような吐息を奏でる いつものニアだ…可愛い僕だけのニアだ… 「は……あああん、アア…う…あふ…あ…。」 僕はその声をずっと聞いていたくて朝までニアを離さなかった。 |